クレームから始まる物語

こんにちは!猫大好きnoramieです!
今日は、クレームから始まる物語 というお話をしようと思います。
よろしくお願いします。

動物行政からの依頼

猫のボランティアをしていると、どうしても関りが出てくるのが
その地域の保健所にある動物担当の管轄行政です。
何故かと言うと、餌やり禁止看板の改正や、動物愛護に関する啓発資料作り
区の広報誌への掲載、そして不妊手術の助成金の見直し等々、多岐にわたるからなのです。
管轄の課の担当者というのは、数年毎に代わるので、当然色々なタイプの方が
いらっしゃいました。中には熱心に話を聞いてくださる方もおりました。

やはり、住民からの動物相談も様々で、全てをお役所が解決できる訳でも無いので
時々、ボランティアに協力を求めてくる場合がありました。
2006年当時の担当さんは、結構丸投げタイプで非常に疲れました…(;´Д`)
この話は、その頃の一本の苦情電話から始まった案件でした。

クレームから始まる物語1

バス通りから、少し路地に入った古い静かな住宅街にクレーム主のお宅がありました。
高齢の女性で、近隣に野良猫が多く憤慨されていて、数軒先の現場に案内してもらう間も
ずっと不平不満を言っておりました。猫のことだけでなく、公園の植栽の間隔のことだとか
道端に転がっている鉢植えの受け皿に水が溜まっていると、やれ蚊が発生するだとか。
とにかく、ありとあらゆるものが気に入らないご様子…すると、後ろから息子さんらしき
男性が、サンダル履きで慌てて追いかけて来て「ほら、また血圧が上がるから!」
と、自宅へ連れて戻って行かれました。

呆気に取られながらも、とりあえずリサーチしなきゃと、現場のお宅にお話を聞きました。
その家の方が、野良猫に餌を与えていたのは事実でしたが、あの人(=クレーマーね)に
怒られたから、怖くてもう餌をあげられない。でも、この塀の向こうに餌をあげている家が
あるから大丈夫。なんてかなり無責任な事を言い訳をのたまっておりました。
確かに、数匹の猫が塀を登って、そちら側へ行くのが見受けられました。
しかし、よく見ると、まだ生後2ヶ月位の幼猫もいるではないの!
こんなおチビでは塀は登れないし、くるりと周ってそちら側へ行く知恵も無いだろう。
まだ二月の寒い時期でしたから、雨になる前に保護しようと決めました。

クレームから始まる物語4

狭い路地だったので、自転車に捕獲器を2台積んで向かい設置。
まず最初に入ったのが、茶トラのオスでした。前回のリサーチで、もう一匹は
茶白だったなーとカバーを掛けていると、背後でガシャンと捕まった音が!
で、振り返ると茶白ではなく黒白が入っていました。思わず、誰っ!?
2台しかないので、一先ず病院経由で連れて帰りました。

この時の眼光鋭いハチワレ髭柄女子こそ、何を隠そう家の猫になったサボンちゃんです。
兄妹そろって尻尾が短く、お芋みたいだったので「いもっちーズ」と呼んでいました。
当時は、仮名の他に、兄弟や同時に保護したグループにチーム名を付けておりましたの。
で、亡くなるまで慣れなかったサボンちゃんと違って、茶トラくんは慣れたので
その後すぐに里親さんが決まり、お届けする事が出来ました。

 

近くにいた猫ボラさん

いやしかし、あの茶白の子は一体何処へ行っちゃったんだろう?
残りの成猫のTNRをしながら考えていました。まさか間に合わなくて…
と、最悪な想像が頭をよぎったその時、通りがかりの女性に声をかけられました。
聞けば、直ぐ近くに住んでいて敷地内に迷い込んで来た猫達を保護して飼っているとの事。
まさかと思い、茶白くんの画像を見せるとビンゴ!最近、家に入れた子だと。

無事だったんだー良かったぁ~とホッとしましたが、里子に出さないのですか?と尋ねると…
里親募集は、不安が多すぎて自分には無理なので、今までの子達も出さずに全て家の子にして来た。
なので、多頭飼いになってしまったから、ご近所には内緒で飼っているのだと言う。
当時は、地域猫の概念も薄く、大々的に猫ボラやってます!なんて言おうものなら
近所から無理難題を押し付けられ兼ねない。だから個人ボラさんは隠密活動という人が
少なくなかったんです。にしても、こんな近くで問題が起こっているのに…。

クレームから始まる物語3

しばらくTNRに通っていると、再び、その女性に声をかけられました。
近くの知人の所でも、猫が増えちゃってて…という相談でした。
案内された場所は、すぐ裏の一軒家で中年女性の一人住まいの様でした。
あっ、ここが最初に聞いた塀の向こうの餌を与えている家だったのかっ!
家主は、足が不自由らしく、家の中も外も散らかっていて、見るからに
だらしのない印象でした。なんというか魔女みたいな感じ…(;’∀’)

以前はカラスにも餌を与えていて、近所で問題になり保健所が注意に来た事もあったらしい。
ただ、以前から自分が餌を与えている子達は、全て不妊手術済みだと言うのだ。へっ?
では、今回の依頼の猫達は?と聞くと、実は隣のマンションに住んでいる若い夫婦が
飼っていた猫が逃げ出し、野良化してしまった結果、妊娠出産し住み着いてしまったと。
勿論、その夫婦に問い正したけれど、探さず・引き取らず・知らぬ存ぜぬだったそうです。
酷い話だー。個体を確認させてもらうと、まだ若いアメショー系の子で、子供達5匹も
もう手術できるくらいに育っていました。ので、追加のTNRをする事になりました。

 

周囲への広報の大事さ

徒歩圏のすぐ近く、バス通り沿いに良い動物病院があるので紹介すると
猫ボラさんに言われて、事前に訪ねてお願いしておきました。
ところが、捕獲した次の日、手術予定の朝に連絡が入り、獣医師の持病の腰痛が悪化し
病院へ行かないとならないので、手術できないと…(>_<)
急きょ別の病院へ無理を言って頼み込み、迎えに行くと、預けておいたカバーも掛けておらず。
体調が悪くなることは誰にだってあるから仕方ないにしても、こういう猫に対するデリカシーの無さ
信用できないので、近くても二度と行くものかと思いました。

そして、何度か通って全ての依頼が完了し、やれやれと思っていた所、
数ヶ月後に猫ボラさんから連絡が入り、あの女性の猫達の一部が毒殺されてしまった事実を知りました。
折角、手術したのに何てこったとショックを受けました。
近隣の住民によるものではないかと推測できたが、キチンと説明しておくべきだったと
ひどく後悔したものです。たとえ活動を理解してもらえなくても、あるいはそうしていても
結果が変わらなかったとしても、もっと出来ることがあったのではないかと自問自答しました。

きっと、住民達は風変わりな餌やり女性の事を、邪魔者扱いし偏見の目で見ていたのだろう。
でも、実際真実はどうだ。そこに至った経緯や原因は、よくよく観察し深堀りしないと
決して見えてこないし、話し合わなければ何の解決にも緩和にもなり得ないのです。

クレームから始まる物語2

それ以来、現場周辺の住民に出来る限り説明する努力はしてきましたが
餌やり=迷惑行為と紐づけてしまっている人が多すぎて話にならない地域もありました。
全住民に声をかけるわけにもいかないので、一時的に説明の貼り紙を貼らせてもらえないかと
頼んだこともありましたが、公園などは無理でした。

区によっては、行政担当とボランティアが協働してTNRした場所に報告書を貼り
上手く行っている事例もあります。ボランティアが活動しやすい様に、また地域猫達を
ルールを守って世話する事への理解を進める為に、サポートするのも行政の役割ではないかと思います。
最近では、野良猫の不妊手術への助成金を出す県や市も増えて、各地で動物愛護の在り方も変化してきています。
けれど、まだまだ理解に苦しむシステムや事件があるのも現実だと感じています。

クレームが切っ掛けで、問題に気が付いて対処できることはあるのですが
ただ誰が悪いと言っているだけでは、ましてや猫に八つ当たりしても問題は解決しないのですよ。

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